月明かりジャムをわけた小さなうさぎ
ひとりで光る月明かりジャムを作りたかった小さなうさぎルルが、迷子のホタルと友だちになり、分け合う喜びを知るあたたかな友情のお話です。
森のはしっこにある小さなきのこの家に、ルルといううさぎが住んでいました。ルルの耳は桃の花びらみたいにやわらかく、足音は雪のように静かでした。 ある夕方、丸い月が木の葉のあいだから銀色の光をこぼすと、ルルは小さなおなべを出しました。「今夜は、世界でいちばんきらきらする月明かりジャムを作るの」と、ルルはささやきました。
ルルは露を一つぶ、赤い木いちごを三つ、たんぽぽの香りを少しだけ、おなべに入れました。最後に月明かりをひとさじすくおうとしたとき、窓の外で「ぽん!」と小さな音がしました。 ルルがドアを開けると、草の葉の上に一匹のホタルが座っていました。光は弱く、羽はしょんぼり下がっていました。
「こんにちは。ぼく、ピップ。友だちとはぐれちゃったんだ」と、ホタルは小さな声で言いました。ルルはおなべを見ました。 月明かりジャムは、自分だけのひみつのおやつにしたいと思っていたのです。でもピップの目は、夜空の小さな星みたいにふるえていました。 ルルはふわふわのハンカチを持ってきて、ピップをそっとふいてあげました。
「少し休んでいっていいよ。そのかわり、ジャムをまぜるのを手伝ってくれる?」とルルが言いました。ピップはうなずいて、おなべの上をゆっくりくるくる飛びました。 するとピップの小さな光が月明かりとまざり、ジャムの中に金色の波ができました。甘い木いちごのにおいが部屋いっぱいに広がり、おなべは静かにぷくぷく歌いました。

そのとき、強い風が吹いて、窓ががたんと開きました。おなべのそばのガラスびんがころころ転がり、月明かりのスプーンが床に落ちました。ルルはびっくりして耳をぎゅっとたたみました。 「たいへん、ジャムが冷めちゃう!」ピップもおどろきましたが、すぐにぱっと明るく光りました。「ルル、ぼくが道を照らすよ。びんをつかまえて!」
ピップは小さなランタンのように飛びました。ルルはその光を追いかけ、転がるびんを一つずつつかまえました。 最後のびんが戸口まで行ったとき、ルルは前足をぐんとのばして、ぎりぎりでつかみました。ふたりは顔を見合わせて、くすくす笑いました。 ジャムはまだあたたかく、前よりもっと明るくきらめいていました。
ルルは小さなびん二つに月明かりジャムを入れました。一つはルルのぶん、もう一つはピップのぶんです。「でも、友だちはどうやって見つけるの? 」とルルが聞くと、ピップはびんを抱いてほほえみました。「この光るジャムがあれば、みんな見つけてくれるよ。」ふたりは夜の道へ出て、ルルはびんを高くかかげました。
やがて木々のあいだから、ぴかり、またぴかりと、小さな光が集まってきました。「ピップ!」友だちのホタルたちがうれしそうに呼びました。 ピップはルルのところへ飛んできて、ほっぺにやさしい光を当てました。「わけてくれたから、ぼくは道を見つけられたんだ。」ルルの胸は、焼きたてのパンみたいにぽかぽかふくらみました。
その夜、ルルは月明かりジャムをひとりで食べませんでした。うさぎとホタルたちは、こけの上に輪になって座り、小さなひとさじずつ味わいました。 森は甘く明るい香りでいっぱいになりました。ルルは知りました。いちばんきらきらしているものはジャムではなく、友だちと分け合う心なのだと。
The End
今日のお話はここまで
心に残った場面を、親子でゆっくり話してみてください。
ADVERTISEMENT